2015年10月6日(火) オペラ オテロ
今回もギリギリで間に合いましたー!
メトロポリタン歌劇場にオペラを見に来るのもこれで3回目。
こう連チャンで同じ場所に来ていると、だんだん慣れてくるというもの。
この日のオペラの演目はヴェルディ作曲の「オテロ」です。
ご存じシェイクスピア原作のオペラ化。
ヴェルディの晩年のオペラは、ワーグナーを意識したのか或いはつられたのか、
はっきりとしたアリアらしいアリアがなくなり、序曲もなくなり・・・
というわけで、しっかりと聞きこまないと全然メロディが頭に入ってこないので、
予習は日本語字幕のついた(テレビ録画の)DVDを繰り返しガッツリ見ました。
(まあ、メロディが入ってこないとは言ってもワーグナーほどではないですが。)
主に見たのはこちら。
英国ロイヤル・オペラ ヴェルディ:歌劇《オテロ》 [DVD]
です。


オテロを十八番にしているドミンゴとキリ・テ・カナワのコンビ。
指揮はサー・ゲオルグ・ショルティで、彼の80歳記念の特別公演だとか。
どう見ても80歳には見えないビシッとした紳士な指揮姿でした。
余談ですが、これは1992年の公演なのですが、カーテンコールの時に
ロイヤルボックスにおられるチャールズ皇太子とダイアナ元妃が映ります。
ああ、ダイアナ妃~!とオペラ以外のところで何だかしんみりしました。
このDVDの見どころは、悩めるオテロを演じるドミンゴや清廉なカナワはもちろん、
ヤーゴ役を歌ったセルゲイ・レイフェルクスの演技力ではないでしょうか。
ま~この人の演じるヤーゴの醜悪でいやらしいこと。
それはもう、闇の奥底から湧き出るようなおぞましさがあります。
これは映像のあるDVDでないと分からないことです。
演出もオーソドックスで分かりやすいです。
ただし、ヤーゴ役はこのイメージが強烈に残ってしまいました。
その他、
というものすごい形相のマリオ・デル・モナコのどえらく古いやつも見ました。
1959年2月に東京で行われた公演で、古ーい日本語字幕が付いているのです。
音質とか画質とか、ハッキリ言って見られたものではないですが、
ただただ、デル・モナコの輝かしい声に圧倒されました。(そりゃこの顔ですもの。)
「黄金のトランペット」とは彼の異名だそうですが、その名前が本当にぴったり。
演技はアンタ歌舞伎役者か!とツッコミ入れたくなりますが、何をおいてもデル・モナコの声!
偶然にも持っていたCDもデル・モナコのものでした。
こちらはカラヤン指揮のウィーン・フィルのもの。
専業主婦サラミとしては、夕食の支度をしている時など、ひたすらこれを流していましたが、
やはり一番に耳に入るのはデル・モナコの声でした。女性にモテたやろうなぁ・・・。
さて、座席はバルコニーの一番前のA列で、120ドルという今回2番目に高い席でした。

前の画像の使い回しです。バルコニーはこんな上ですが、数日前に「トゥーランドット」を見た
ファミリーサークルよりも随分前に出ているため、舞台はだいぶ近くなります。
「多分この辺」とあるところが今回座った座席で、かなり左寄りでした。

ここからは天井のスワロフスキーのシャンデリアがよく見えました。
今回観たヴェルディのオテロは新演出だったそうで、今シーズンのメトの一押しだった様子。
無料で頂けるプログラムの表紙が、全部このオテロ役のアントネンコの顔でした。
今回のキャストその他は・・・
指揮 : ヤニック・ネゼ=セガン
演出 : バートレット・シャー
オテロ : アレクサンドルス・アントネンコ
イアーゴ : ジェリコ・ルチッチ
デズデモナ : ソニア・ヨンチェーヴァ
カッシオ : ディミトリー・ピタス
ロドヴィーコ : ギュンター・グロイスベック
ブログなどではオテロ役のアントネンコの評判が良かったし、
ヨンチェーヴァはオペラリア(←コンクール)の優勝者ということでちょっと期待していました。
ジェリコ・ルチッチは前にどこかで見たと思ったら、この人が題名役を歌う
「リゴレット」をテレビの録画DVDで見たことがあったのでした。
ブレゲンツ音楽祭でも「トロヴァトーレ」のルーナ伯爵を歌っていたけど、
聴いた感じは真面目な歌い方なのでちょっと地味かなーと予想していました。
オテロの新演出はとてもシンプルで、オペラを邪魔するものでなかったので良かったと思います。
透明の舞台装置が効果的に形を変えて動いていくのがとてもセンスが良かったなーと。
後で知りましたが、演出のバートレット・シャーという人は、オペラ以外にも
渡辺謙主演のミュージカル「王様と私」とか色々ミュージカルの演出も手掛けているのですね。
その辺はやはりニューヨークだな~。
肝心の内容ですが、オテロ自体がハデハデなアリアだらけのオペラというわけでないので、
今日も所々眠くて意識が飛んでしまいました。(^^;
でも、第1幕の始まりは演奏の迫力でうぉ~!と嬉しくなりました。(←単純)
今回の座席も、ウィーン国立歌劇場に比べるとあまり音響の良さは感じられませんでした。
やっぱりホールが大き過ぎて音がボワーっと拡散するのかな。
ただし、舞台はよく見えました。ま、120ドルだし安くはないですわな。
そしてメトは拍手のタイミングがやっぱり早い。「トゥーランドット」を観た時よりマシでしたが。
歌手は、アントネンコのオテロは最初硬かった!あんまりパッとしなかったです。
しかし、中盤から声がよく出るようになって、伸び伸びして最後は良くなりました。
サラミ夫曰く、世界に名だたるメト一押しの新演出の主役で、プログラムの表紙も飾る。
そりゃー、ありえないほどのプレッシャーがかかってるんじゃないかと。
そうかも知れません。しかもメトは大掛かりに映像も配信するし、
このシーズンのオープニングもこのオテロだったらしいし。
この人結構な巨体なので、演技で倒れたりする時はバタッと倒れるのではなく、
ダルマのようにゴロンといくのがご愛嬌。デカいので仕方ないけど、重そうでした。(笑)
あと、いい声の人だし、もっとハッキリしたアリアのあるオペラでこの人の歌を
聞いてみたいなーと思いました。
なんかオテロになるとヴェルディでもかなり音楽劇という感じだし。
デズデモナを歌ったヨンチェーヴァはキレイな人で華がありました。
声も役にピッタリだし可憐ながら迫力もあるし、メトは女性歌手がいい人いっぱい~。
そして、地味かもと予想していたイアーゴ役のジェリコ・ルチッチは、
声が通らないので所々演奏にかき消されました。
一番の聴きどころの「クレド」(というアリア)もやっぱり最後の最後、全く聞こえず。
やっぱりこの人には癖のある役どころは向いていないのかも。歌い方もおとなしいです。
顔つきはゴツいのにねぇ。
やはり予習DVDのロシア人歌手の強烈なのが基準になってしまい、
あんなすごいのを期待してもムリだとは思っていましたが、でもちょっと残念。
あと、ロドヴィーコという脇役のギュンター・グロイスベックは出番が少しだけでしたが、
ウィーンで観た「ルサルカ」の水の精(水のお父さん)の役で聴いたことがあります。
サラミ家では以来この歌手を「お父さん」と呼んでおり、ウィーンで観た以来だったので
懐かしい~!と思ったけど、出番少なかったのであんまり印象がありません。(笑)
しかし、全体的に私が良かったと思うのはメトの合唱です。
おそらく人数もかなり多いのでしょうが、まとまってるし迫力あるし感動しました。

さて、カーテンコールの様子です。中央がお父さんことギュンター・グロイスベック。
右端はカッシオ役のディミトリー・ピタスで、左の人誰だっけ?

イヤーゴ役のジェリコ・ルチッチ。思うに、生真面目な人だと思うんですよね。
ビシッと真っ直ぐに立ち、後ろに下がっても前で手を組んで微動だにしませんでした。
笑顔も最後の最後だけ。セルビア出身だけに、ラテンな気質は持ち合わせていないと見た。
その生真面目さが歌い方にも表れているような気がします。

華やかなソニア・ヨンチェーヴァ。
やっぱりメトのライブ・ビューイングでアップの映像に耐えられるのはこういう歌手なんだな。

そしてアントネンコ。かなりの巨体で鉄人28号を思い出しました。
しかし、痩せたら声が出なくなるかも知れません。このまま頑張って欲しいです。
アントネンコのオテロは本人が上品なせいもあって、割と誠実な悩めるオテロという感じですが、
女性の私から見ると、ストーリー的には「オテロはアホちゃうか!」と責めずにはいられません。
オテロを純粋に慕って慎ましくおとなしくしていたデズデモナを疑い、嫉妬に狂って最後は殺害?
本当に、オテロ(に限らず他のオペラでも)のヒロインは可哀想でなりません。
とはいえ、ラストにオテロが死ぬシーンは、あの甘いメロディが蘇るせいで、
そんなアホオテロでもホロッと来てしまいます。これが音楽の成せる業。
まあ、ストーリー的には女性として共感できない部分はあるものの、
とても良い新演出の舞台でした。

そして全員でご挨拶。指揮者の方が、迫力のある指揮から想像できないほど小柄な人で意外でした。
それにしても、メトのカーテンコールはあっけない。すぐ終わります。
観客の数が多いからカーテンコールを繰り返してたらキリがないのかも知れないけど。
今日こそは~!と、私達もダラダラせず、終演後はとっととアパートに帰りました。